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巻頭言(Vol.32 No.10)2010.10.04

 十月一日は日本酒の日である。この日になると必ず思い出す歌がある。若山牧水の「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒は静かに飲むべかりけり」である。牧水は一日一升飲んだという。唐の李白も大の酒好きで「酒一斗詩百篇」と言われ、「山中にて幽人と対す」とする「両人対酌山花開 一杯一杯復一杯 我醉欲眠旦去 明朝有意抱琴来」など酒豪家李白の面目躍如。また「花間壺酒 独酌無相親 挙杯迎名月 対影成三人」(月下独酌)など牧水の世界に酷似する。我歌えば徘徊し、我舞えば影零乱す。
 古来酒を詠んだ歌人は多い。然し昭和三年九月十七日、四十三歳で亡くなるまで約三百首の酒の短歌を作った牧水の右に出る者は多くはいまい。
酒のためわれ若うして死にもせば 友よいかにかあはれならまし
鉄瓶のふちに枕しねむたげに 徳利かたむくいざわれも寝む
妻が眼を盗みて飲める酒なれば 惶てて飲み噎せ鼻ゆこぼしつ
 大正十三年の九州旅行で「とにかく思い残すことなく飲んで来た。揮毫しながら、大きな器を傾けつつ飲んだ。また、別に宴会なるものがあった。一日平均二升五合に見積もり、一人して約一石三斗を飲んできた、と数字に示されたときは、流石の私も、ものが言えなかった」とは以って瞑すべし、というべきか。 (松岡)

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